トピックス
2023.12.07
「明治日本の産業革命遺産フォトコンテスト」選考結果
たくさんのご応募ありがとうございました。
厳正な審査の結果、入賞作品が決定しました。
最優秀賞
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「記憶を紡ぐ」
白井 恒良さん
撮影対象資産:端島炭坑
作品に込めた思い
夏の真夜中に人知れず軍艦島の上に架かる天の川が架かっていた。炭坑が栄えていた時も同じ天の川が架かっていたはずである。そして辛いことも楽しいことも見ていたはずである。そして現在の誰もいない島も。この風景と一緒に軍艦島の様々な記憶を、更に後世の人に伝えていって欲しいものだと思います。
優秀賞
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「夏色の記憶」
浦川 智広さん
撮影対象資産:端島炭坑
作品に込めた思い
時が止まったかのように洋上に浮かぶ端島の姿 過ぎ去りし日々の華やかさを偲びつつ夏の眩さを切り取る一枚です。
審査員コメント
幻想的というのが第一印象でした。全体的な淡い色とグラデーション。船が波を立てながら横切っていく感じは、時間が止まっているかのように時間を気にせずにゆっくりとこの写真を見ていられる感じがしました。
山村健児
このアングルで端島を撮影している写真は他にもありましたが、このような柔らかい雰囲気の写真はあまりなく、技術よりも感性的な部分が素晴らしいと思いました。静寂な中にも船の動きを取り入れていたり、構成のバランスもとても良かったです。
高橋草元
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「夜空に咲く大華に映える明治遺産」
山口 英幸さん
撮影対象資産:三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン
作品に込めた思い
夏の風物詩長崎港でのながさきみなとまつり 長崎を代表する三菱造船所生まれた時から見てる風景。ライトアップされたクレーンと大輪の花火を一緒に納めたくてシャッターを切りました。
審査員コメント
「ジャイアント」であるはずのクレーンが小さく見える。そして夜景全体を綺麗に彩っている花火。花火を撮る技術もそうですが、この場所からこの風景が見れるという情報も大切だと思いました。ここから見てみたいと思う写真です。
山村健児
長崎の街並みとクレーン、さらには花火まで1枚にきちんと納めていて技術力の高さを感じました。構図のバランスも綺麗ですし、花火とクレーンの色が全体の差し色として映えていて素敵だと思います。
高橋草元
エリア賞
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■萩
「タイムスリップした町を探索せよ」
カ ガシンさん
撮影対象資産:萩城下町
作品に込めた思い
モノクロ写真の中に映るカーブミラーは、 まるでタイムマシンのようで、 その中には鮮やかな色彩で息づく萩城下町が映し出されます。 昔ながらの雰囲気が残る町並みに心を馳せ、 過去と現在が交差するこの場所から、異日常へようこそ。
萩エリア関係自治体
モノクロ写真の中にカーブミラー越しにカラーで映し出される萩城下町に、過去と現在の記憶が交錯している様子が感じ取れました。またモノクロとカラーにより、過去と現在を映し出すというアイデアが面白く、応募者のセンスを感じました。
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■鹿児島
「洋風和モダンな技師館の夜明け」
片平 洋一さん
撮影対象資産:旧鹿児島紡績所技師館
作品に込めた思い
桜島と技師館の間から日が登る朝の風景はとっても美しいでした。 また、イギリス製の図面をもとに日本の寸尺の技術で建てられたとのことで、細部にはコロニアル調の美しさも見ることができました。
鹿児島エリア関係自治体
技師館、朝焼けの空、桜島それぞれの美しさが伝わってくる絶妙な構図です。当時のイギリス人技師達も見たであろう光景に思いを馳せることができる、素晴らしい1枚です。
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■韮山
「守護神のツーショット」
細澤 達弥さん
撮影対象資産:韮山反射炉
作品に込めた思い
日本を守る為に生まれた同志のツーショット。オレンジ色に染まり始めた空一面に広がる雲は、現在も稼働しているかの様な反射炉から出る煙のよう。
韮山エリア関係自治体
夕日の淡いコントラストの中、堂々と立ち続ける韮山反射炉の姿と大砲をうまく写真で切り取っていただき、かつてはこの韮山反射炉で日本のために大砲作りが行われていたことを実感させる一枚だと感じました。
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■釜石
「三番高炉の番人」
藤原 信孝さん
撮影対象資産:橋野鉄鉱山
作品に込めた思い
橋野三番高炉に近づいたら、大切なものを守る番人がごとく立ちはだかる子鹿に。 今なお大自然と共にある世界遺産を感じました。
釜石エリア関係自治体
橋野鉄鉱山は高炉跡だけでなく、山中の運搬路や採掘場跡も構成されており、高炉の稼働には、豊かな森林資源は欠かせないものです。過去から、現在まで残る豊かな自然を感じることができる一枚です。
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■佐賀
「未来へつなぐ」
福島 尚恵さん
撮影対象資産:三重津海軍所跡
作品に込めた思い
娘と三重津海軍所跡に伺いました。 先人たちの知恵や工夫を学び、次の世代への架け橋となるこの三重津海軍所跡。 つなぐをテーマに娘と手を繋いで撮った1枚です。
佐賀エリア関係自治体
三重津海軍所跡で手をつないで立っている親子の影が収められており、この遺産が持つ記憶と今の姿をよくとらえられています。幕末の歴史が次の世代にもつながっていくことが感じ取れる、とても素敵な写真です。
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■長崎
「Trail」
横尾 拓哉さん
撮影対象資産:三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン
作品に込めた思い
1909年導入以降、 100年以上も長崎港を見守ってきたジャイアントカンチレバークレーン。明治維新や戦時、 バブルといった様々な歴史を経験しており、 威厳ある姿は長崎港を象徴し、 これまでの歴史を重々と物語っている様に感じます。 この神々しい姿がこれからも長崎の歴史の断片であり続ける事を祈ります。
長崎エリア関係自治体
夜の長崎港に佇むジャイアント・カンチレバークレーンを切り取った、とても印象的な一枚です。明治42年から長崎港に立ち続けるクレーンの姿は、その長い歴史を私たちに語りかけているように感じました。
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■三池
「木陰から」
草野 亮介さん
撮影対象資産:三池炭鉱 宮原坑
作品に込めた思い
木陰から竪坑と青空を眺め、 当時働いていた人々はこの木陰からどのような空を見ていたのだろうか、空を見上げる余裕はあったのだろうかと考えながらシャッターを押しました。
三池エリア関係自治体
単に宮原坑を大きく写真におさめるのではなく、木の枝葉を大きく構図に組み込み、その隙間から見える青空。真っ暗な地下で働かれていた方々が、ふと目線を上げた時、自然の美しさに目を奪われるという対比が素晴らしく感じられました。
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■三池
「祭りの記憶」
白井 恒良さん
撮影対象資産:三池炭鉱 万田坑
作品に込めた思い
万田坑華やかなりしころ、多くの人が万田坑とかかわり生活していたのではないかと思う。多分祭りもあったのではないかと想像しています。 万田坑から近くのグリーンランド遊園地の花火を見ていると、その時代の光景がちょっとだけ見える気がします。
三池エリア関係自治体
明治から現代まで市民の生産活動や、生活、そして賑わいを見守ってきた万田坑第二竪坑櫓と、遠くに打ちあがる現代の遊園地の花火が、過去の「記憶」と現代の私たちの「今」を、一枚の写真として切り取られています。通常、夜間の通行者がほぼいない三池炭鉱専用鉄道敷跡から万田坑の櫓を見て撮影された撮影者の制作の意図を感じます。
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■三池
「光の航路」
奥田 重一さん
撮影対象資産:三角西港
作品に込めた思い
航路に日が沈み、それが海面を照らして乱反射する様子がとても綺麗で思わずシャッターを切りました。
三池エリア関係自治体
かつて大型蒸気船が通っていた島と島の間の航路にちょうど夕陽の光の航路が重なり、美しい夕景と世界遺産としての価値と歴史を伝える石積み埠頭の光と影のコントラストが、三角西港の情景を見事に映し出した作品だと思います。
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■八幡
「夏空」
奥田 重一さん
撮影対象資産:官営八幡製鐵所旧本事務所
作品に込めた思い
凄く良く晴れていてきれいに見えました。
八幡エリア関係自治体
旧本事務所が124年もの間、同じ場所に変わらず建ちつづける重みと、今も現役で稼働する工場の中にあることがよく分かる作品です。長く伸びる線路と「夏空」というタイトルにより、日本の近代化の礎となった歴史がこれからも続いて行くことを感じさせる点を評価しました。
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■八幡
「刻まれた記憶」
十亀 良幸さん
撮影対象資産:遠賀川水源地ポンプ室
作品に込めた思い
凄く良く晴れていてきれいに見えました。
八幡エリア関係自治体
夕映えの中に佇む遠賀川水源地ポンプ室を写した一枚です。日本の産業の未来を見据えて建設された往時の姿を思い起こさせるとともに、100年以上の年月を経ても変わらずこの場所にあり、この先も長く街のシンボルとして人々の記憶に刻まれてゆく姿が美しく表現されています。
「明治日本の産業革命遺産」世界遺産協議会事務局コメント
厳正なる審査の結果、最優秀賞1作品、優秀賞2作品、エリア賞11作品が選ばれました。おめでとうございます。
「明治日本の産業革命遺産」の全エリアを対象としたフォトコンテストは今回で2回目の実施となりました。たくさんの方からご応募をいただき、そして、各構成資産へ足を運んでいただき誠にありがとうございました。今回の募集テーマは“記憶”。応募作品には、各構成資産がこれまで積み重ねてきた時間や歴史の一瞬を、感性豊かに写し出した作品が多く寄せられました。一枚一枚の作品から、大切な資産を受け継いでいきたいという想いが伝わってきます。最優秀賞・優秀賞、エリア賞の作品を通して、先人たちの偉業に思いを馳せていただき、そしてぜひ、「明治日本の産業革命遺産」の地を訪れてみてください!
審査員
山村健児
アメリカのカリフォルニア州にあるビッグ・サーにて、1枚のポストカードに魅せられて風景写真を撮り始めたのが2013年1月。以来、日本は47都道府県、アメリカ、北欧、そしてニュージーランドなど世界を飛び回りながら絶景を撮影し、現在も撮り続けている。また、風景写真に必要な3つのレシピ「いつ・どこで・何が撮れるのか」を共有する写真サービス PASHADELICを創業。SNSでは15万人以上のフォロワーがおり、インフルエンサーとしても活躍している。
高橋草元 株式会社アマナフォトグラファー
大学ではデザインやプログラミングを学び、趣味で始めた写真に魅了され、毎日スナップ写真を撮影する日々を過ごす。アマナに入社後、スタジオでのライティング技術を学び、大学で学んだ幾何学的な視点とスナップ写真で培った感覚的な要素を得意とし、現在は人物撮影と物撮りを軸に活動中。
「明治日本の産業革命遺産」世界遺産協議会
世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の管理保全及び理解増進・情報発信を推進するための組織。8県11市で構成(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、山口県、岩手県、静岡県、北九州市、大牟田市、中間市、佐賀市、長崎市、荒尾市、宇城市、鹿児島市、萩市、釜石市、伊豆の国市)
審査員コメント
星景写真をきちんと撮り、技術的なことも申し分なく、この場所にも何度か訪れているからこそのこの瞬間が撮れているのではないでしょうか。軍艦島の名前の通り、巨大な一隻の船が夜中に運航をしながら次の目的地へと向かっているようです。
山村健児
これだけ引いた画角にも関わらず端島のシルエットを生かし存在感のある写真に仕上げているのと、技術が必要となる星空の撮影も組み合わせていてとてもレベルが高い一枚だと思いました。暗い中に船の灯りがぼんやりと光っているのもとても綺麗です。
高橋草元